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原子力・放射線の分野で働く女性たち

藤田 玲子

常に本質は何か、
研究のキーとなる原理は何かを考えます

藤田 玲子(ふじた れいこ)

国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)
ImPACT プログラムマネージャー
(株式会社東芝首席技監を経て)

入社動機について教えてください。

 大学では電気化学を専攻しましたが、東芝では、博士課程を修了した学生は総合研究所か原子力技術研究所でしか採用できないとのことで、原子力技術研究所に入所しました。また、入社したころは男女雇用機会均等法もなく、女性の博士課程修了者は前年に総合研究所に一人採用されただけでした。就職難でしたので採用してくれるところで頑張ってみようと考えていました。

日頃の仕事は、どのような内容ですか。やりがいや、心掛けていることも教えてください。

 2014年10月からJSTのImPACT(Impulsing Paradigm Change through Disruptive Technologies Program)のプログラムマネージャーをしていますので、以前とは少し仕事が変わり、新しい技術を研究開発しています。世の中のニーズに合わせて新しい研究のアイデアを提案し、アイデアを実用化するためにプロセスを成立させるための試験を行い、成立性を示し、その技術を具体化する装置を開発し、実用化するものです。青森県六ヶ所村で運転開始直前の使用済み燃料再処理工場で使用されている技術より少し未来の再処理技術として、溶融塩と溶融金属を用いる高温冶金法の乾式再処理技術を、電力中央研究所と共同で日本で初めてゼロから立ち上げ、実用化の一歩手前まで開発しました。高速炉の乾式再処理技術として酸化物燃料と金属燃料の両技術を保有しています。

 今まで使用済み燃料の再処理技術だけでなく、放射性廃棄物処理技術やレアメタルの回収技術の研究開発など、そのときにタイムリーに必要とされる技術の研究開発をしてきましたが、研究を始める前に必ず、特許を作成、出願することや、研究を進める間に国際会議で発表すること、そして研究開発の終了後にはうまくいってもいかなくても論文にして投稿することを心掛けてきました。これは、共同研究している若い研究者にも奨励してきました。また、依頼された研究は断らず、時間の使い方を工夫して引き受けてきました。このことによって、自分の研究分野が期せずして広がり、思いもよらない展開となり、ImPACTのプログラムマネージャーという今の自分があるのだと思います。

 また、研究開発をしているときには、常に本質は何か、研究のキーとなる原理は何かということを考えながら進めてきたことが、ほとんどの技術を実機の概念設計にまでに進められたのではないかと思います。さらに、基礎研究でも必ずニーズは何かを考えながら実用化、すなわち出口を見据えることにより、俯瞰的に物事を考える訓練ができたような気がします。

ワークライフバランスは、どのようにとっていますか。

 つい最近まで子育てと介護が重なっていましたので、上手にワークライフバランスができていたほうではありませんが、高校生の頃から料理が好きでしたので、新しいメニューを考えては料理することで、息抜きができてきたのではないかと思っています。また、定期的に音楽会に行き、叶えられなかった夢の音楽家になったような気分を一時だけでも味わうことでストレスを解消してきました。

 今は日本原子力学会長を務めているため、なかなか実践できないのですが、子育てと介護を卒業したので、時々、美術館へ行き、ゆったりとした時間を過ごすことができるようになり、若いときに考えていたワークライフバランスのとれた生活をやっと実現できるようになってきました。

 福島の事故から4年が経ちましたが、未だに避難されている方が10万人を超えています。2011年秋から、日本原子力学会では定期的に福島を訪ね、除染や健康影響についてのアドバイスをしたり、住民の方々へのシンポジウムを開催したり、市町村の要望を伺い、国や県との間に立ち、要望を伝えたり、除染情報プラザに専門家として通ったりしてきました。また、福島県南相馬市では、水田を借りて稲を栽培し、セシウムの挙動を調べる試験もしてきました。福島の再生・復興のために福島へ通うことは、私のライフワークのひとつになりました。今後も福島の再生・復興のために少しでもお役に立ちたいと思っております。

(2015年5月当時)