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原子力・放射線の分野で働く女性たち

菖蒲 順子

地域の方々と同じ目線で言葉を交わし、
言葉のキャッチボールをできるように

菖蒲 順子(あやめ じゅんこ)

国立研究開発法人 日本原子力研究開発機構
核燃料サイクル工学研究所 計画管理室
主査

入社動機について教えてください。

 私が生まれ育った場所は、茨城県那珂市です。近くにある会社といえば、日立製作所関係と原子力関係の数社がまず思い浮かびます。私の身近にも原子力に携わる仕事をしている人がたくさんいました。就職前には原子力についての知識はあまりありませんでしたが、それが日本のエネルギーを支えているものだということは知っていました。何か社会の役に立ちたい、原子力であればそれが叶えられるのではないかとの思いから、当時の動力炉・核燃料開発事業団への入団を希望しました。

日頃の仕事は、どのような内容ですか。やりがいや、心掛けていることも教えてください。

 施設見学に来られた方への対応や、広報・地域交流、次世代層への放射線教育、リスクコミュニケーションなど、人と交わる業務に携わってきました。

 

 私が所属する核燃料サイクル工学研究所は、再処理施設やプルトニウム燃料施設、地層処分研究施設などがあり、核燃料サイクルに関する幅広い研究開発や東電福島第一事故の収束に向けた研究開発を行っています。

 これらの事業は、地域の方々の理解や支援がなければ成り立ちません。このため私たちは、研究開発の内容や安全対策などについてお伝えするとともに、地域の方々の声をしっかりと捉え、それに応えようとしています。しかしながら、原子力にかかわる言葉は、普段の生活では馴染みがないものがたくさんあります。私や仲間が地域の方々に説明すると、「難しくてわからない」と言われることがあります。私自身も入社した直後は、それと同じように感じたことを覚えています。このため、私は、自分が理解するのに苦労していたころのことを思い出しながら、地域の方々と同じ目線で言葉を交わし、言葉のキャッチボールができるように心掛けています。

 東電福島第一事故は、私にとって衝撃的な出来事でした。同時に多くことを学び考えるきっかけとなりました。

 私は事故直後から、健康相談ホットラインの対応や、福島県民や茨城県民の方々を対象とした放射線に関する説明会、福島県民の方々を対象とした内部被ばく検査におけるコミュニケーション活動などにかかわりました。そこでは、参加された方々の話に耳を傾け、相手の心情に寄り添ったコミュニケーションを心掛けてきました。そこでお会いした小さなお子さんを持つ若いお母さんや、これから結婚し、妊娠・出産する娘さんを持つお母さんからの将来を心配する声、真剣な眼差しは今でも忘れられません。

 事故から4年以上が経過した現在、説明会への依頼はとても少なくなりました。事故直後の混乱は、だいぶ落ち着いてきたように思えます。しかし、国民の皆さんの放射線に対する不安は、完全に消えたわけではありません。その不安は、今も心の奥底に沈んだままではないかと懸念しています。私は、放射線の健康影響に関する知識を伝えるだけでなく、皆さんの心の中にあるそのような悩みを少しでも共有し、さまざまなことについて一緒になって考えていくことができればと思っています。

 一方で、原子力にかかわる問題は山積しています。この世の中では何かをすれば、あるいは逆に何かをしないでいれば、そこでは必ずリスクとベネフィットが発生します。その両方を見据えながら、どのような選択をしていくことが望ましいことなのかを、ともに考えていきたいです。そこでは、ベストの選択を目指すのが目的ではなく、忌憚のない意見交換を繰り返し、さまざまな人が持つそれぞれの価値観を尊重しながら、ともに相互理解を深めていくことが最も重要なことだと思います。エネルギー問題は、そうしたきっかけを提供するものではないかと考えます。そして、将来を担う子供たちには、これから起こるさまざまな事柄に対して、どのように対処することが望ましいのかをしっかりと考えられるような素地を養ってもらえればと願っています。私たちが行っている出張授業などの支援が、そのために少しでも貢献することができればと思っています。

ワークライフバランスは、どのようにとっていますか。

 同じ職場の技術者である夫と、娘の3人家族です。4月から中学生になった娘のお弁当作りから朝がスタートし、慌ただしく一日が終わります。休日は、家事や娘の学校行事に参加することがほとんどですが、夏はハイキングや海水浴、冬はスキーなど、時間をみつけて家族で出掛けることも楽しみのひとつです。

 ストレス解消を兼ねている特技が実家の庭木の剪定と芝刈りです。生垣をきれいに剪定できたときは、気持ちがスッキリ晴れやかになります。

(2015年6月当時)