
報告者:佐々木淑江(株式会社日立製作所)
日時:6月25日(火) 9:30-10:30
THORP(Thermal Oxide Reprocessing Plant)を見学
(1)受入・貯蔵施設
(2)せん断・溶解処理(前処理、Head-end)施設
(3)Chemical Separation(溶媒抽出・分配・精製)施設
(報告者の思い入れが入っていますことをご了承ください。)
THORP。10年前に見たのと同じ赤と黒の斬新なデザインの外壁は、流れた歳月のせいか、少しばかり色が褪せたように感じます。私がここに来るのは今回が2回目。10年前はまだ建設中で、燃料受入・貯蔵プールをガラス越しに見ただけでしたが、その後1994年から運転を開始し、日本を初めとする海外の委託再処理を行っています。六ヶ所再処理施設の設計を担当していた頃、お手本はフランスのUP3、ドイツのWAK、イギリスのTHORPでしたので、私にとってとても懐かしく今もって気にかかる存在なのです。そのTHORPが運転中で目の前にあるわけで、感慨もひとしおでした。ちなみに、THORPは"THermal Oxide Reprocessing Plant"の略で、「ソープ」と読みます。
ここでも女性技術者が活躍していて、受入・貯蔵施設はアニーが、化学分離施設は化学のエンジニアでTHORPで働いているという、透きとおるような金髪のレイチェルが、それぞれ説明してくれました。
「受入・貯蔵施設」は、海外から船で輸送された使用済燃料が鉄道で運び込まれ、キャスクから出されてプールで5年間冷却され、その後再処理するために集合体毎に取り出されて、再処理の最初の工程である「せん断・溶解工程」へ向かうスロープを登っていく、という遊園地の乗り物のように「物が動く」設備です。正確にその動きを知りたがる見学者の山のような質問に、アニーが半分切れそうになりながらも辛抱強く説明をしてくれました。(皆さん、アニーが一生懸命してくれた説明を覚えてますか?)
いわゆる前処理工程(Head End)と呼ばれる「せん断・溶解工程」は、せん断機1基とバッチ式溶解槽(六ヶ所はフランスの連続式溶解槽です)3基から構成されています。ここでは、ガラス越し&カメラのレンズ越しに、実際にせん断機で燃料ピンが2インチの長さに切られる様を見ることができました。ぐしゃっと押しつぶすように切られた燃料の断面 の映像が見えます。切られた燃料が溶解槽へ続くシュータをころげ落ちていく様子が目に浮かび、「ほんとうに運転しているんだ」という実感が沸いてきました。この後、溶解槽のバスケット内へ落とし込まれた燃料は、80℃の硝酸で4時間+140℃で7~8時間かけて溶解され、遠心清澄機でゴミを取り除いてから、次の「化学分離施設」へ送られます。バスケットには「ハル」と呼ばれる燃料ピンのさやが残りますが、これはイギリスでは「中レベル廃棄物」になるのだそうです。
さて、再処理施設で実物を見学できるのはここまでです。物が動くので見ていておもしろく印象に残りやすいのですが、実は再処理のメインは、この後の「化学分離施設」なのです。ここはレイチェルが化学屋さんらしい説明をしてくれました。“Chemical Separation"というとおり、化学的な方法でウランとプルトニウムと核分裂生成物を分離する施設で、日本では「溶媒抽出」「分配」「U精製」「Pu精製」と呼んでいる工程にあたります。THORPでは、溶媒抽出とPu/Uの分配はパルスカラムで、Pu/Uの精製はミキサセトラで行われています。精製後の酸化ウランと酸化プルトニウムの粉末は、隣接するSMPでMOX燃料の加工に使われます。
化学屋さんにとっては、まさにここがハイライト。TBPという溶媒でウラン・プルトニウムを核分裂生成物から分離した後、プルトニウムの原子価を4価から3価に変えて(レイチェルがメモに「Pu(IV)→PU(III)」と書いて説明しました)ウランと分離する、なんて胸躍ることでしょう!ただ、原子力でもテクニカルタームが全然違う再処理の世界、化学屋でない者にとっては理解しがたい説明なわけで、そのせいかここのパネルだけは、日本語の文章で説明が付いています(!)。
再処理のメインの部分は、放射能レベルが高いため、運転が始まると全て密封されたコンクリートの「セル」の中に閉じ込められてしまい、人目に触れることがありません。溶解槽もパルスカラムもミキサセトラも、六ヶ所にあるのと同じ形をした高レベル廃液濃縮缶も、みんなこのコンクリートの壁の向こうで運転しているんだなあ、写真くらい見たかったな。まあ、実物を見ても化学反応は目に見えないけどね。東海村や六ヶ所の展示館のように、液体に色がついていて、透明の容器だったら別だけど。