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私たちの活動

WIN-Global年次大会 第11回WIN-Global年次大会(アメリカ)

廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)視察

報告者:樋口奈津子(関西電力株式会社)

  1. 日時 平成15年6月20日(金) 09:00~12:00
  2. 場所 ニューメキシコ州 カールバッド
  3. 内容

(1)WIPPとは

廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)とは、使用済燃料の再処理に伴い発生するTRU(超ウラン核種)を含む放射性廃棄物の処分施設であり、1999年3月から操業が開始されている。米国では、商業用の原子力発電所から発生する使用済燃料は再処理せず、直接処分することとしていることから、当施設に処分されるのは米国内の軍事施設から発生するTRU廃棄物のみとなっている。

(2)施設の概要

  • 処分場はカールバッド東部にあり、周辺は石油、天然ガス、カリウム鉱山が存在する(実際あちこちで掘削が行われていた)。政府所有の42km2の土地(プロテクティブゾーンと呼んでいた)の中央部に0.5km2の処分場がある。また、約7マイル南には核実験施設もある。
  • 連邦エネルギー省(DOE)が処分に関する全責任を負っており、処分費用も国が負担することとなっている(国家予算)。
  • 処分場の深度は655m、岩種は岩塩層(塩化ナトリウムの結晶)。
  • 処分場は8つのパネル(大きな部屋)が建設されており、それぞれのパネルは7つの部屋から成る。パネル1は今年3月に埋設が完了している。(「場所はいっぱいあるので容量は全く気にしていない」との担当者の言葉から、将来はもっと拡張することも考えられている様子。)
  • 立坑は、吸気用、排気用、廃棄物運搬用、salt handling(ずり搬出用)用の4本。排気用のは人の運搬にも用いられる。エレベーターで処分場の深度(-655m)まで約5分(700ft/min)程度であった。

(3)廃棄体受け入れ状況について

  • 当処分場が受け入れるTRU廃棄物は、軍事施設から発生する、半減期が20年超で、α核種濃度が3.7GBq/t以上のTRU核種を含む廃棄物。
  • 廃棄物は以下の3つのカテゴリに分類。
    (1)コンタクトハンドル廃棄物(CH廃棄物)…直接扱いが可能な廃棄物。表面線量が2mSv/h以下。政府の認可に基づき受け入れている。
    (2)リモートハンドル廃棄物(RH廃棄物)…表面線量が2mSv/hを超え、10Sv/h以下の廃棄物。遠隔操作で取り扱うことになっており、将来受け入れ予定。
    (3)ミックス廃棄物…化学的有害廃棄物を含む廃棄物。
  • 現在はCH廃棄物を受け入れている。
  • 廃棄体はコンテナに入れられ、トラックで輸送している。コンテナは1つ50ドル(約6,000万円)と非常に高価なので、再利用することにしている。特に洗ったりせず、そのまま発生元へ返却するらしい。

(4)現場視察

a.廃棄体受入施設

  • 施設入り口はエアロック式ドアで、中は負圧になっている。これ以降カメラの持ち込み禁止。
  • 受入時の検査は、表面サーベイ、スミア、カメラチェック、フィルタ吸引(ダスト状汚染の有無を調べる)等の表面汚染検査を実施している。汚染が見つかれば発生元へ返却することとなっており、操業以来、1度だけ返却した実績があるとのことであった。
  • ドラム缶7缶を1パックとし、それを3段に積み上げたものの上に、防湿剤として酸化マグネシウムを乗せ、処分場に定置していくとのことであった。
  • 管理区域ではあるが、(汚染はないとの考えから)専用の衣服に着替えることもなく、我々見学者はフィルムバッジや線量計も持たず施設に入ることができた。従業員はフィルムバッジ、TLD線量計は着けるが、衣服はそのままであった。

b.モニタリングルーム

  • 各地からの廃棄物輸送状況(廃棄物を積んだトラックが今どこを走っているか等)がオンラインで確認できるようになっており、常時監視しているとのこと。当日も休日であっったが、2名の従業員が監視していた。
  • 同時に全米の天気や警報なども確認できるようになっている。

c.地下処分施設

Exhaust shaftより地下へ移動。立坑は人の移動にも用いられているようになっている。

  • 入り口はエアロック式、中は負圧になっている。各パネルの入り口まで車で移動した。
  • 地質は岩塩(塩化ナトリウムの結晶)。不純物の含まれない透明な部分と、クレイや鉄等の不純物が混入している部分が見られた。これらは2億5千万年前にできた地層であるとのことであった。
  • 受入施設と同様、線量計、フィルムバッジ、専用の衣服等身につけず入ることができた。
  • 廃棄体のハンドリングには、フォークリフトを用いており、廃棄体の入ったパッケージを3段に積み上げた後、コンクリートブロックで埋戻すことになっている。岩塩層には地下水が存在しない、日本の処分場のようにベントナイトは使用していない。
  • 閉鎖後のモニタリングについては、モニタリング用のケーブルを引くために開ける孔が、放射性物質の放出経路になると考えられることから、実施することは考えていないとのことであった。
  • 施設内はカメラ持ち込みが許可されたが、廃棄体を撮すことは禁止された。

(5)その他

事前に先方に送付しておいた質問に対する回答から得られた情報を紹介する。

  • 軍事施設から発生するTRU廃棄物、175,000m3をWIPPに処分することを決定したのは米国議会である。将来、WIPPに処分できる廃棄物及びその処分容量を変更できるのも議会だけである。ちなみに、WIPPに関する責任は、連邦エネルギー省(DOE)のOffice of Environmental Management(EM)というところが負っている。
  • 1960年代には、NAS(National Academy of Science)およびその他の関係機関により、古代岩塩層が放射性廃棄物処分にとって良い地層であることが認められた。そこで、いくつかの候補地が考えられたが、カールバッドはそのうちの1つであった。カールバッド自治体は、誘致に積極的であり、1971年、米国政府に申し入れを行った。1974年にサイト特性調査が開始され、1981年には最初の立坑が掘削された。1988年には技術的に処分可能であることが確認されたが、政策上及び規制上の問題から操業開始が遅れた(最初の受入は1999年3月26日)。
  • カールバッドは常にWIPP受入に好意的であり、カールバッド及び南東ニューメキシコの反対派は少数。少数ではあるが、州北部の反対派の圧力団体が原子力及びWIPPに反対しているが、大多数のニューメキシコ市民はWIPPの安全性を問題視していないとのことである。
  • WIPPはニューメキシコおよびカールバッドに多大な利益をもたらしている。WIPPに関連する仕事は約900もあり、高速道路の改修やそれらに関連した雇用が増えたからである。また教育や訓練等も充実している。連邦エネルギー省(DOE)は、環境改善費用として、ニューメキシコ州に年間2,000万ドルを支払っている。
  • 米国では、原子番号92(ウラン)以上、半減期20年以上のα核種濃度が3.7GBq/t以上の汚染がある廃棄物をTRU廃棄物と定めている。3.7GBq/t以下であれば、TRUを含んでいてもTRU廃棄物として扱わない。即ち、トータルの放射能濃度により、高レベル放射性廃棄物もしくは低レベル放射性廃棄物として扱う。また、TRU廃棄物は、コンタクトハンドル(CH)廃棄物、リモートハンドル(RH)廃棄物に分類され、CH廃棄物は表面 線量が2mSv/h以下、RH廃棄物は2mSv/h~10Sv/hのものと定められている。
  • 有用資源(WIPPの場合、石油や天然ガス)の掘削等による偶然の人間侵入は、処分場の閉鎖後に十分起こりうるシナリオであると考えられるが、連邦エネルギー省(DOE)は、このシナリオのリスクを非常に低く評価しているとのことである。また、環境保護庁(EPA)も、例えこのようなシナリオが起こったとしても、規制基準値を超えることはないという評価に同意している。
    また今は、WIPPに関する情報は世界中のどこにいても得ることができるとともに、処分場跡地には主要8カ国語で書かれた警告標識を設置するため、長期にわたって人間侵入を防ぐことができると考えているとのことであった。(現場の担当者は、「米国政府が存在する限り、政府が永久に管理、立ち入り制限をする等、責任を持つことになっている。」と言っていた。)
  • 廃棄物の回収可能性(Retrievability)については、WIPPは永久処分することを想定して設計されているので再取り出しは考えていない。再掘削は可能であるが、TRU廃棄物は経済的にも技術的にも価値がなく、再取り出しする意味がないとのことであった。
  • 廃棄物の受入状況については、2003年6月18日に約13,000m3の廃棄物を6つのDOEサイトから受け入れたところ。現在まで、トータルで1,784回の輸送を行い、輸送距離は延べ約1.8Mマイルになる。これまでに、輸送やハンドリングの際に放射性物質が放出されるといったトラブルは一度もなかった。これらの状況はWebサイト(www.wipp.ws)で確認できる。
  • 化学毒性はCH廃棄物、RH廃棄物の両方に含まれており、WIPPの廃棄物全体の約6割がいわゆるミックス廃棄物になる。これらは、放射性物質と化学毒性の両方を含んでいる。1999年にResource Conservation & Recovery Act(RCRA)が発効されて以来、ミックス廃棄物でない廃棄物及びミックス廃棄物のうち、CH廃棄物であるものを受け入れてきた。RH廃棄物の受入は2005年に開始される予定である。
  • 各パネル(それぞれ7部屋から成る)は、満室になり次第閉鎖される。全てのパネルが閉鎖された後、地上施設を撤去することになっている。将来世代が掘削や採掘、ボーリング等、処分場に影響を与える行為をしないよう警告するために永久標識を設置する。環境モニタリングは、減衰が確認されるまで(線量がピーク値を過ぎるるまで)続けるかもしれないとのことである。